誰かの写真の一部になっている

渋谷のでかい交差点で、僕は、俺は、私は

【歌詞考察】ヨルシカ「ただ君に晴れ」 -後編-

こんにちは。

Ryoです。

前回に引き続き、歌詞考察をしていく。

今回は、ヨルシカ「ただ君に晴れ」の1コーラス終わったところから。




歌詞を引用させていただく。
何度読んでも素晴らしい。

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ヨルシカ-ただ君に晴れ

作詞作曲、編曲 : n-buna


夜に浮かんでいた
海月のような月が爆ぜた
バス停の背を覗けば
あの夏の君が頭にいる

だけ

鳥居 乾いた雲 夏の匂いが頬を撫でる
大人になるまでほら、背伸びしたままで

遊び疲れたらバス停裏で空でも見よう
じきに夏が暮れても
きっときっと覚えてるから

追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く

口に出せないなら僕は一人だ
それでいいからもう諦めてる

だけ

夏日 乾いた雲 山桜桃梅 錆びた標識
記憶の中はいつも夏の匂いがする

写真なんて紙切れだ
思い出なんてただの塵だ
それがわからないから、口を噤んだまま

絶えず君のいこふ 記憶に夏野の石一つ

俯いたまま大人になって
追いつけない ただ君に晴れ

口に出せないまま坂を上った
僕らの影に夜が咲いてく

俯いたまま大人になった
君が思うまま手を叩け

陽の落ちる坂道を上った
僕らの影は

追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く

口に出せなくても僕ら一つだ
それでいいだろ、もう

君の思い出を噛み締めてるだけ

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では早速、続きをば。

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夏日 乾いた雲 山桜桃梅 錆びた標識
記憶の中はいつも夏の匂いがする

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ここは全体を通して情景描写。

でもこの山桜桃梅がほんと鳥肌。
実は山桜桃梅には、花言葉が二つある。
「郷愁」と「輝き」

……やばくね?
「郷愁」っていうのは、故郷を懐かしむ気持ちのことで、ノスタルジーとも言う。

そう、この曲を聞いたときに誰もが感じてしまう、「大切なものを過去に置いてきてしまったなあ、もう取り戻せないなあ」っていう気持ちそのものである。

そして二つ目の「輝き」
前編で考察した、『思い出の中の「君」はキラキラしていて』という部分に見事に重なってくる。

山桜桃梅の花言葉からこの曲が作られたんじゃないかってくらい見事にハマってる。

次。

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写真なんて紙切れだ
思い出なんてただの塵だ
それがわからないから、口を噤んだまま

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ここは、前編で書いた伏線③に繋がってくる。

「僕」は、写真も思い出も大切なものだから、という理由で、何か大事なことが言えなかったみたいだね。

でもここの歌詞、写真や思い出より今が一番大切だってことを伝えようとしてる。

この先も「口に出せない」シリーズは続くので、最後のところで伏線③回収ってことでまとめて書こうと思う。

次。

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絶えず君のいこふ 記憶に夏野の石一つ

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ここ実は、正岡子規の「絶えず人いこふ夏野の石一つ」という俳句をモチーフに作詞されている。

俳句の意味としては、「夏野に石が一つあり、絶えずそこを行き交う人が石に座って憩いの時間を過ごす」みたいな感じ。

歌詞に当てはめると、「記憶の中心に石が一つあり、そこに絶えず君がやって来て憩いの時を過ごしている」といった感じかな。

記憶の中はいつも「君」だけ、いなくなったと思ったらまたすぐに「君」が来る。

忘れられないんだね。

次。

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俯いたまま大人になって
追いつけない ただ君に晴れ

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サビ。
1コーラス目ではまだ背伸びしてたのに、ここではとうとう「僕」は俯いてしまった……。

結局口に出せなかったから、ってことだろうね。

ここのタイトル回収で、ようやくタイトルの意味にありつける。

「晴れ」は「天晴れ」的な意味で、「君」は本当にすごい、「僕」じゃ追いつけないよ、みたいなことだと思う。

次。

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口に出せないまま坂を上った
僕らの影に夜が咲いてく

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ここは伏線③の続きなので最後にまとめて書く。

でも、僕らの影に夜が咲いてくって言ってるから、ここでまた思い出から都会の夜の喧騒に戻されたんだろうね。

次。

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俯いたまま大人になった
君が思うまま手を叩け

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ここ、「俯いたまま大人になってしまった、手を叩いて笑ってくれよ」という意味にとれる。

記憶の中のキラキラした「君」が、「僕」の自己肯定感を歪めるほどに強く存在感を放っている、ということだろうか。

次。

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陽の落ちる坂道を上った
僕らの影は

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口に出せないまま坂を上ったところの続き。

陽の落ちる坂道を上っていたら、陽が沈んで「僕」と「君」の影がアスファルトに溶け込んだんだろう。

夜を咲かせて都会の夜の喧騒に戻すこともできるし、そのまま思い出を続けることもできる。

ラスサビに向けて盛り上がるところだから、どちらとも取れるようにしたんだと思う。

次、最後。

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追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く

口に出せなくても僕ら一つだ
それでいいだろ、もう

君の思い出を噛み締めてるだけ

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「口に出せない」シリーズ最後なので、ここで伏線③を回収しよう。


「口に出せないなら僕は一人だ
それでいいからもう諦めてる」

「写真なんて紙切れだ
思い出なんてただの塵だ
それがわからないから、口を噤んだまま」

「口に出せないまま坂を上った
僕らの影に夜が咲いてく」

「口に出せなくても僕ら一つだ
それでいいだろ、もう」


恐らく「僕」が口に出したかったことは、「ずっと一緒にいたい」みたいな愛の言葉だと思う。

言えば一緒になれる確信に近いものはあったのかもしれないけど、100%じゃないから言えなかった。

今が一番大切なのに、万が一失敗して思い出が悲しいものになってしまうのが嫌だったから、言えなかった。

当時の「僕」は、「一人のままでいいから思い出を大切にしたい」って思ってたんだろうけど、今となっては、「これだけ思い出にこびりついているんだから、今でも二人一緒にいるようなものだろう」と自己を正当化して何とかやり過ごそうとしている。

けど、

「君」の思い出を噛み締めて、寂しく一人で生きているだけなんだよね。











以上で歌詞考察を終える。

この「ただ君に晴れ」という曲、思ったより悲しい曲なんだね。

また一つ知見が広がったような気がする。


今回はここまで。